000703 食事(中国11)


 気分を変えて(ネタも少なくなってきたので)食事についてお話ししましょう。

 朝飯は毎日、宿舎の守衛さんが作ってくれる。ご飯とみそ汁と卵焼き、トーストとコーヒーと目玉焼き、が一日交代という、恵まれた朝食です。一日の食事の中では朝飯が一番うまい。

 仕事日の昼は、現場事務所の若いコックが作るんだけど、これは日本人の口に合いません。私は我慢して毎日食べることができたのですが、全く食えずに日本から持ち込んだカップラーメンばかり食べている人もいました。私も、二日連続でスープから蠅の部品が出てきたときは、食欲が無くなりました。

 夕食も、現場の同じコックが作る。でもこれを食べるのは現地スタッフだけ。日本人はだいたい街に出て外食しています。左安門のすぐ近くには、火鍋屋、餃子屋、ラーメン屋、などの食堂がたくさんある。10分ほど歩けばマクドナルドやケンタッキーもある。高級な中華料理屋もあります。

左安門の火鍋屋1

 これは宿舎の敷地内にある火鍋屋。劉さんのお別れ会のときです。左は毛沢東を尊敬してやまない瀋陽人の劉さん。右は政府に批判的な北京っ子のGさん。中央にGさんの霊が写っていますが、湯気とストロボのイタズラだな。中央の鍋にS字の仕切があるのが分かるでしょうか? 半分に白湯、半分には異常に辛い赤湯が入っています。好きな方に好きな材料(牛、羊、野菜)を放り込み、煮えたところを胡麻ダレで食べます。

 火鍋は、日本で言えば焼肉に相当するような、最もお手軽な宴会です。一人50元(700円)も出せば食べきれないくらい出てきます。もっとも、中国の会食では「食べきれない」と言うことがマナーの一つで、食べきってしまうと、主催者がケチで料理が少なかったと言うことなんですね。

左安門の火鍋屋2

 鍋の湯(スープ)を足してくれる。ストロボを上げ忘れたのでこんな写真になった。このおねえさん、1秒ぐらい完全に静止していたんだね。

左安門の火鍋屋3

 この人の胸には「私はいい女」とかなんとか、「なかぴゆうこうのきょうりょう」と同じ調子の日本語が印刷されていた。

 ここは清潔で家庭的という、希有な店です。普通の火鍋屋は、大衆食堂風で汚いか、チャイナドレスのドアガールがいる気取ったところか、どっちかなんです。

 金銭感覚について。1万円を両替すると750〜760元になります。しかし、北京の金銭感覚を実感したければ、元をそのまま100倍して円で考えると、実体に近いように思います。例えば北京で50元の食事をするということは、日本で5000円の食事をするのと同じ贅沢具合ということです。この感覚は、中国人といっしょに遊ぶとき、必要になります。

品名価格両替感覚
ラーメン3元39円300円
タクシー初乗10元130円1000円
散髪20元260円2000円
モミジ100元1300円10000円
月給1500元2万円15万円
パソコン6千元8万円60万円

 普通の日の夕食では、私は宿舎の近くの牛肉拉面と言う店で3元の拉面と3元の麺状の豆腐を食べたり、ハルピン餃子王という店で餃子12個と張雪さんに教わった魚香ロースーという料理を合計10元ほどで食べたりしていました。魚香ロースーはチンジャオロースーの具の種類を増やしたような料理です。魚が入っているわけではないのです。どこの料理屋でも、ホイコーロ、チンジャオロースー、マーボドウフ、などの料理名は、日本語で言っても通じます。

 北京のラーメンは、私にはあまり旨くありません。香菜(しゃんつぁい)が入っているので青臭さに我慢が要るのと、やっぱり味が全然違います。日本料理屋に行って豚骨ラーメンを注文すると、私が求めるラーメンを食べることが出来ます。ただし値段は10倍になります。

 ハルピン餃子王は劉さんお勧めの店です。東北の餃子の味に近いのだそうで、水餃子ですが私にも旨かった。メニューを見ると豚肉や羊肉と野菜の組み合わせでいろんな種類の餃子があり「1斤15元」と書いてあります。うわ高いな、と思いましたが、1斤とは重さの単位でとんでもない量らしいです。何回も行って試行錯誤(言葉通じない)の末、12個の倍数なら注文できることが分かりました。他に料理を一皿頼むと、だいたい1人分に余るほどで、10元程度になります。

 本場の中華料理は、日本人にはまずいのでしょうか? 私の乏しい経験から言うと、高級なレストランで食べると、たいてい、中国人にも日本人にも旨い。大衆的な店で食べると、中国人には旨く、日本人の口には合わない場合が多いです。しかし大衆食堂でも、何を食べても旨いところもあります。味覚というのは、実に微妙です。第一に習慣的なものです。

 ある晩、食事の時間が無かったので友誼商店の近くの回転寿司に行きました。日本人は私と客筋のSさん、それに毎度ガイドを頼んでいるモミジの張雪さんと童さん。普通に旨かったですが、張さんは日本醤油の味が合わなくて、ほとんど食べることが出来ませんでした。

 三四郎などの高級でない日本料理屋でも、食事をすると50元以上かかります。それでも中国の食事が合わない日本人は、毎晩こういう所で食べています。生存のためであって、贅沢とは言えない問題があります。私達(Sさん、童さん、私)も一度行きましたが、久しぶりに日本風の食事をとるとウキウキします。豚骨ラーメン、ざるソバ、豚カツか何かの定食をとりました。

 マクドナルドとケンタッキーは、いつも満員です。上に書いたように、味覚というのは実に微妙な問題なのですが、それでいて世界中で好まれているマクドナルドとケンタッキーの威力には感心させられます。このようなアメリカ文化の能力については司馬遼太郎が「アメリカ素描」の中で書いています。私も、食べる物に窮すると(ほとんど日曜ごとに)マクドナルドに駆け込みました。マクドナルド難民。 マクドナルドのセット(チキンバーガー、ポテト、コーヒー)は16.8元だったかな。

 北京の女の子はアイスキャンディーが大好きです。冬はビールを冷やしてない(室温で客に出す)店が多いのに、まだ寒いうちからアイスを舐めながら歩いている人がいっぱい居ます。モミジでも、一番歓迎されるおみやげはハーゲンダッツです。マクドナルドに行く度に、通訳兼ガイドの先生方にもソフトクリームを支給する必要があります。

 変わった食べ物では、スッポンの甲羅のヘリと、鳩の一部を食べました。あと、魯迅の故郷の料理だという高級なレストランで、ウンコの匂いのする豆腐を食べました。蛇を食べさせる料理屋もありますが、もちろん試していません。職場では、食事からの肝炎の感染について、幾つかの注意事項が挙げられています。





2000年4月2日作成 home pageへ