000106 ひかる先生 2


 ひかる先生は恐がりだ、ということになっている。小学校に上がる前は、洗濯機の音が怖かった。

 鼻のアレルギーがあって、先日耳鼻科に行った。鼻を洗う管を入れようとしたら、ひかる先生、「いや、ダメだ、できません。う〜ん、いや、無理です。」と、30分ばかりねばって入れさせなかったらしい。弟と母親が両脇に付いて説得しても、無駄だったと。医者が何かしようとするたびに、「何するんですか? どうなるんですか?」とうるさいんだと。

 思うに上は恐がりとは言えまい。ただ用心深いだけのこと。

 中学生になって、自分の部屋が与えられた。ところが「壁に血痕がある」と言って、夜は恐れて自分の部屋に近づかないらしい。見せてもらったが、なるほど壁と床に黒いシミがある。床のシミは、液体が跳ねた痕を示している。母親はコーヒーをこぼした痕だという。ひかる先生は、いや、血だ、という。私が「戦国時代の落ち武者がこぼしたコーヒーの痕ではないか」と折衷案を示すと、ひかる先生私を見た。新築なんだが。

2000年1月6日作成 home pageへ