991018 こわいもの


 おっさんになって、怖い夢を見ることも少なくなった。まったく無いわけではないが、めったにない。夜の闇や、藪を渡る風の音も、子供の頃のようには、怖くないような気がする。

 子供の頃、夜、あなたが明かりのついた部屋にいると、窓の外から何か奇怪な物がこちらを見ているような気がして、それを確認するのが恐ろしくて、窓の方を見れなくなることは無かっただろうか? あるいは、懐中電灯で照らされた夜道で、懐中電灯の光の輪のすぐ外の闇の部分にとんでもない奴が潜んでいるような気がして、懐中電灯を振り回したことはないだろうか?

 命がない物に精神が宿っているように感じて恐れるのは、原始人や子供に普通な感情で相貌性知覚という、と安本美典の「神武東遷」という本に書いてある。(そらで書いているので間違っているかもしれない)

 甥っ子が小学校に上がる前、洗濯機が動く音が怖くて、洗濯中は近づけなかった、と言う話を聞いて、いたく感銘を受けた。私の場合、かなり大きくなるまで、便所で水を流す音が恐ろしかったので、レバーを「大」にすると急いで外に出ていた。中学の頃まで、便所の水の音が怖かったように思う。昼間でも怖い。甥っ子は便所の水の音は怖くなく、私は洗濯機の音を恐れたことは無い。しかし、ごうごうと低くこもった水の音という点では、共通している。何か、遺伝子の記憶にまつわる血族の恐怖というものがあるのではないだろうか?

1999年10月18日作成 home pageへ